有限会社介護センターみもざ
令和6年4月 制定
1 身体拘束やその他の行動制限の適正化に関する基本的な考え方
身体拘束やその他の行動制限(以下「身体拘束等」という。)は、利用者の自由を制限することであり、尊厳ある生活を阻むものである。
事業所では、利用者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員全員が身体的・精神的弊害を理解し、拘束禁止に向けた意識を持ち、利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、利用者の身体拘束等を原則禁止とする。
また、身体拘束等の廃止は、本人の尊厳を回復し、悪循環を止める、虐待防止において欠くことのできない取組である。
(1)身体拘束等に該当する具体的行為
身体拘束等の具体的な内容としては、次のような行為が該当すると考えられる。
(介護保険指定基準において禁止の対象となる具体的な行為)
ア 徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。
イ 転落しないように、ベッドに体幹や四肢を紐等で縛る。
ウ 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
エ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢を紐等で縛る。
オ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
カ 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
キ 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
ク 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
ケ 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢を紐等で縛る。
コ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
サ 自分の意志で開くことのできない居室等に隔離する。
(注意)身体拘束に該当する行為とは、本人の身体の機能や行動を制限する目的で行われる各種の行為であると解されるため、身体に重度の障害のある人に対して、体幹を安定させることで活動性を高める目的で使用されるベルトやテーブルについては、一律に身体拘束と判断することは適切ではない。
身体拘束か否かは、目的に応じて適切に判断する必要がある。
(高齢者福祉施設等における高齢者虐待の防止と対応の手引き:厚生労働省)
(2) 日常ケアにおける留意事項
身体拘束等を行う必要を生じさせないため、日常的に以下のことに取り組む。
ア 利用者主体の行動・尊厳ある生活に努める。
イ 言葉や応答等で、利用者の精神的な自由を妨げないよう努める。
ウ 利用者の思いをくみ取り、利用者の意向に沿ったサービスを提供し、個々に応じた丁寧な対応をする。
エ 利用者の安全を確保するため、利用者の自由(身体的・精神的)を安易に妨げるような行動は行わない。
(3)緊急・やむを得ず身体拘束等を行う3要件
利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体を保護するための措置として緊急・やむを得ず身体拘束等を行う場合については、身体拘束等による心身の損害(影響)よりも、拘束しないリスクの方が高い場合で、次の3つの要件を全て満たす必要があり、その場合であっても、身体拘束等を行う判断は組織的かつ慎重に行い、本人又は家族の同意を得て行うこととする。
身体拘束等を行った場合は、その状況について経過記録の整備を行い、できるだけ早期に拘束を解除するよう努力するものとし、その経過を、「虐待防止及び身体拘束等適正化委員会」に報告することとする。
ア 切迫性
利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いことが要件。
身体拘束等を行うことにより本人の日常生活等に与える悪影響を勘案し、それでもなお身体拘束等を行うことが必要な程度まで利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が高いことを確認する必要がある。
イ 非代替性
身体拘束等を行う以外に代替する方法がないことが要件。
身体拘束等を行わずに支援する全ての方法の可能性を検討し、利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体を保護するという観点から、他に代替手法が存在しないことを複数職員で確認する必要あり。また、利用者本人の状態像等に応じて最も制限の少ない拘束の方法を選択する必要がある。
ウ 一時性
身体拘束等が一時的であること(長期にわたらないこと)が要件。
利用者本人の状態像等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定する必要がある。
2 身体拘束等適正化のための組織 虐待防止等責任者及び虐待防止等担当者の配置
事業団の各施設及び事業ごとに、虐待防止及び身体拘束等の適正化を図るため、虐待防止責任者及び虐待防止担当者を配置する。
(1)虐待防止及び身体拘束等適正化委員会の設置
事業所に、虐待の防止のための対策及び身体拘束等の適正化のための対策について、事業所全体で情報共有し、今後の未然防止及び再発防止につなげ、事業団全体で虐待防止及び身体拘束等の適正化に取り組むため、虐待防止及び身体拘束等適正化委員会を設置する。
(2)虐待防止及び身体拘束等適正化委員会の構成員
委員会は、施設長、サービス提供責任者をもって構成し、委員長は、施設長をもって充て、副委員長はサービス提供責任者をもって充てる。
(3)虐待防止及び身体拘束等適正化委員会の所管事項
ア 虐待防止の啓発
イ 虐待の確認及び監視
ウ 虐待発生後の検証
エ 虐待の再発防止策の検討、実行及び実行
オ 身体拘束等について報告するための様式の整備
カ 身体拘束等の事例の集計・分析
キ 身体拘束等の適正化策の検討、実施及び実施後の検証 ア~キの職員への周知徹底
ク 虐待防止及び身体拘束等の適正化のための研修
ケ ア~ク以外に、委員長が指示した事項
(4)虐待防止及び身体拘束等適正化委員会の開催
委員会は、委員長が必要と認める場合又は委員の求めに応じて開催し、少なくとも1年に1回は開催する。
3 身体拘束等の適正化のための職員研修に関する基本方針
身体拘束等の適正化のための職員研修を原則年1回以上および職員採用時に実施する。
研修内容は、基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するものであるとともに、本指針に基づき、権利擁護及び虐待防止を徹底する。
研修の実施内容については、研修資料、実施概要、出席者等を記録し、保存する。
4 身体拘束等発生時の対応に関する基本方針
身体拘束等を行わなければならない場合は、以下の手順に従って実施する。
(1)施設長・サービス提供責任者(虐待防止等責任者)への報告
身体拘束等の必要性が懸念される事態が発生した場合は、施設長・サービス提供責任者へ報告し、身体拘束等の必要性の判断を仰ぐ身体拘束等が必要と判断された場合は、虐待防止及び身体拘束等適正化委員会の開催を、サービス提供責任者に依頼する。
突発的・緊急的に身体拘束等が必要になった場合には、施設長や虐待防止等担当者に報告の上、身体拘束等を実施し、実施後に、経緯を施設長・サービス提供責任者に報告するとともに、虐待防止及び身体拘束等適正化委員会の開催を、サービス提供責任者に依頼する。
(2)虐待防止及び身体拘束等適正化委員会による決定
委員会では、「個別の状況による拘束の必要な理由」などから、身体拘束等の必要性を審議する。
身体拘束等の必要性が認められた場合は、引き続き「身体拘束の方法」・「拘束の時間帯及び時間」・「特記すべき心身の状況」・「拘束開始及び解除の予定」等を審議する。
身体拘束等の必要性が認められない場合は、委員会は、身体拘束等以外の方法を提案する。
委員会を開催した場合には、議事録を作成し、5年間保存し、要望があれば提示できるものとする。
(3)利用者本人及び家族等への十分な説明
個別の状況による拘束の必要な理由・身体拘束の方法・拘束の時間帯及び時間・特記すべき心身の状況・拘束開始及び解除の予定等を、利用者本人及び家族等へ詳細に説明し、充分な理解を得て、緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書に記名してもらう。
(4)身体拘束等の実施
身体拘束等を実施するが、法令上、身体拘束等に関する記録は義務付けられているので、「緊急やむを得ない身体拘束に関する経過観察・再検討記録」を用いてその様子・心身の状況・やむを得なかった理由及び経過、解除に向けての取り組み方法などを記録する。
(5)虐待防止及び身体拘束等適正化委員会による再検討
「緊急やむを得ない身体拘束に関する経過観察・再検討記録」の記録をもとに身体拘束等の早期解除に向けて、拘束の必要性や方法を、虐待防止及び身体拘束等適正化委員会で検討していく。
また、身体拘束等の同意期限を越え、なお拘束等を必要とする場合については、「緊急やむを得ない身体拘束に関する経過観察・再検討記録」の記録を再度作成して、虐待防止及び身体拘束等適正化委員会で審議し、身体拘束等の必要性が認められれば、利用者本人及び家族等に、現在行っている身体拘束等の内容と今後の方向性、利用者の状態などを説明し、同意を得た上で実施する。
「緊急やむを得ない身体拘束に関する経過観察・再検討記録」は5年間保存し、要望があれば提示できるものとする。
(6)身体拘束等の解除
(5)の虐待防止及び身体拘束等適正化委員会での再検討の結果、身体拘束等を継続する必要性がなくなった場合は、速やかに身体拘束等を解除し、その旨を利用者本人及び家族等に報告する。
5 利用者等に対する当該指針の閲覧
施設の身体拘束等適正化のための指針は、利用者本人及び家族等が自由に閲覧できるよう、ホームページ等で公表する。
6 その他の身体拘束等の適正化推進のための基本方針
身体拘束等をしない人権を尊重したサービスを提供するためには、サービス提供に関わる職員のすべてが身体拘束等の禁止に対する共通認識を持ち、拘束をなくする取り組みをしなければならない。